2022年10月18日放送 - ふ:分福茶釜の茂林寺


館林の茂林寺に伝わる伝説を基に創作されたおとぎ話『ぶんぶくちゃがま』。

 

 

むかしむかし、お寺の和尚さんが町の骨董品屋さんから立派な茶釜を買ってきます。

早速和尚さんはその茶釜でお湯を沸かしお茶を入れるのですが、何杯作ってもお湯は無くなりません。

不思議な茶釜だと思いながらも和尚さんはそれを使い続けるのですが、ある日、その茶釜は狸が化けていたモノだと知ります。

バレてしまった狸は慌てて山へと逃げ帰ろうとするのですが、優しい和尚さんは狸を引き留め『ずっとこの寺で過ごしなさい』と伝えます。

狸は嬉しくなり、寺に住まわせてもらうお礼に見世物小屋で芸をして、たくさんのお客さんを楽しませます。

その為、この茶釜は笑いで多くの人に福を分けることから、『分福茶釜』と名付けられたのです。

 

 

・・・というのが、私が小さい頃にTBSで放送していた『まんが日本昔ばなし』で聞いた大まかなあらすじです。

そして上毛かるたの『ふ』の札には、その見世物小屋で狸が芸をしている姿が描かれています。

 

 

 

 

 

この物語を作ったのは、明治時代の童話作家である『巌谷小波(いわやさざなみ)』。

 

実はこの方、日本の文学界に途轍もなく大きな影響を与え『日本のアンデルセン』とも言われた人物なのですが、その功績のわりにはあまり名前が知られていない様に感じます。

皆さんはこの巌谷小波が書いた分福茶釜以外の童話の代表作と言えば何か、ご存知でしょうか?

 

 

正解は、『桃太郎』、『金太郎』、『浦島太郎』、『花咲爺さん』・・・などなど。

実は数えきれない程の作品をこの世に遺しており、おそらく皆さんが小さい頃に読んだり聞いたりしていた日本のおとぎ話のほとんどは、この巌谷小波が日本各地の民話や逸話を基に創作したものなのです。

各地に残っている民話には結構残酷な話だったり、グロテスクな表現であるものが多かったりするのですが、巌谷小波はこれらに手を入れ、子供達にも安心して読めるようにした訳です。

 

 

ちなみに群馬に関連する他の巌谷小波作品として有名なのが『舌切り雀』。

安中市にある磯部温泉には現在『舌切り雀のお宿 磯部ガーデン』などの旅館がありますが、もともとこの辺りは舌切り雀伝説発祥の地であり、巌谷はここに滞在してその伝説を基に童話『舌切り雀』を書いたと言われています。

 

 

巌谷小波という文豪の名前とその作品。おそらくラジオを聞いている全ての方が小さな頃に何度となくお世話になっているはずです。

昔話を読み聞かせする際には是非、この人の功績もお子さんやお孫さんに話してあげて下さい。

 

202210月18日

M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』

 

 

KING OF JMK代表理事 渡邉 俊