富岡製糸場が稼働を開始した明治初期は日本の海外輸出額の半分が生糸であり、またその3分の1が群馬県産であったと言われています。そして当時の県内の約6割の世帯が養蚕農家でした。私の実家の周りも小さい頃は養蚕をやっている家が数多くあり、またたくさんの桑畑があったのを覚えています。
この札は、その群馬が誇る蚕糸産業について詠んだ札です。
さて、いきなりですが質問です。
この『ま』の札には『日本』という言葉が使われていますが、実は上毛かるたには『日本』という言葉の入っている札が4枚あります。さてその4枚とはどの札でしょうか?
正解は「い:伊香保温泉 日本の名湯」、「き:桐生は日本の機どころ」、「に:日本で最初の富岡製糸」、そして「ま:繭と生糸は日本一」の4枚です。
注目していただきたいのは、このうちの「き」、「に」、「ま」の3枚で、これらに共通しているのは群馬の絹産業を表した札であるということです。
蚕を育てて繭を生産し、繭から生糸を作り、そして織物に仕上げるという3つの工程をそれぞれが表しており、そしてその全ての札に『日本』という言葉が入っています。
それだけ当時は『群馬が日本の絹産業を支えている』という誇りがあった訳です。
しかし皆さんご存知の通り、日本の絹産業は現在衰退の一途を辿っています。
農林水産省のデータによると、ピークであった昭和5年には国内全体で年間40万トンの繭が生産されていたのに対し、令和2年は何とわずかに”80トン”。ピーク時の5000分の1にまで落ち込んでいます。また群馬県内の養蚕農家の数も国内トップとはいえ現在は83軒しかなく、生産者の高齢化も進んでいます。
通常、生糸の太さは”デニール”という単位で表されるそうで、一般的な繭の太さは3デニールほどです。しかしこれを遺伝子組換え技術によって更に細くし、1.5デニール以下になったものが『超極細シルク』と呼ばれており、今密かに話題になっているのです。
糸は細くすることで表面の凹凸が小さくなります。その為、もともとシルクは光沢や肌触りが良い素材ですが、細くして凹凸を無くすことで更に良くなり、上品なシルクを作ることができる訳です。
この超極細シルクの一般飼育は昨年8月に農林水産省によって承認され、今年初めてその繭が出荷されます。
可能性は未知数。世界に目を向けると、繭と生糸の生産シェアは中国が圧倒していますが、
この新しいシルクの良さが多くの人に伝わって用途が拡大すれば、再び日本の絹産業が蘇るかもしれません。
2021年10月26日
M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』
KING OF JMK代表理事 渡邉 俊