2023年12月5日放送 - み:水上、谷川 スキーと登山


 群馬と新潟の県境に位置し、日本百名山の1つとしても有名な標高1977mの山:谷川岳。

冬はスキー、夏は登山と1年を通じて観光客が訪れ、またその南側には水上温泉や宝川温泉、谷川温泉など多くの温泉街が広がっており、関東屈指のリゾート地としても知られています。

 

 

とはいえ大正時代までは交通の便が悪く、この辺りはあまり有名ではありませんでした。しかし1931年に『る』の札でお馴染みの清水トンネルが開通したことにより上越線が開業。

その結果訪れる人の数も多くなり、一大リゾート地として発展していったのです。

 

 

ただこの清水トンネルの工事では殉職者48名、重軽傷者2,720名という多くの犠牲も伴いました。

更にその48年後に開通した上越新幹線専用の『大清水(だいしみず)トンネル』は全長約22kmと当時世界最長のトンネルとして話題となりましたが、この工事でも開通直後に起こった火災などが原因で92名の命が犠牲となっています。

 

 

 

出典:大成建設 

https://www.taisei.co.jp/works/50092.html

 

またこの大清水トンネルの工事中は、『山ハネ』という現象が作業員たちを悩ませました。

これはトンネルの上にそびえる谷川岳の重量によってトンネルの壁面に圧力がかかり、その壁面の硬い岩盤が剥離して大きな音と共に飛んでくる現象です。

一般生活で遭遇することはまずないですが、大清水トンネルの工事では清水トンネルよりもさらに深い所を掘っていた為、その壁面は谷川岳の圧力をより強く受けています。

その為、この『山ハネ』によって作業員の負傷や機械の損傷が続出したのです。

 

 

更に作業を遅らせる原因となったのが『湧き水』の存在。

谷川岳の中には多くの湧水帯があり、毎分33トンもの冷たい湧き水がたびたび噴出したと言われています。その為、掘削工事はその都度ストップせざるを得なかったのです。

 

しかしこの時、偶然の産物が生まれます。実はこの湧き水を飲むととても美味しいということが作業員の間で大評判になったのです。そのため国鉄は水を送る為の管などを整備して、1984年にこの水をミネラルウォーターとして販売します。

 

その商品名は『名水 大清水(おおしみず)』。

トンネル名称は「“だい”しみず」ですが、商品名は「おいしいみず」にかけて「おおしみず」とし、また濁点を取ったことで"水が濁っていない"という意味も込められています。

 

 

そして2007年からは商品名をリニューアル。その名前は『「From AQUA」〜谷川連峰の天然水〜』。

現在でもJR東日本の駅構内の売店や自動販売機などで販売されているので飲んだことがある方も多いと思いますが、この水は命がけで谷川岳にトンネルを開通させた作業員によって生み出された自然の恵みなのです。

 

 

 

2023年12月5日
M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』

KING OF JMK代表理事 渡邉 俊