藤岡市鬼石町にある桜山公園の『冬桜』と、三波石峡の『三波石』。
1908年、当時三波川村の村長を務めていた飯塚志賀(いいづかしが)は、日露戦争での勝利を記念して、村民と一緒に山一帯へ桜とカエデを植樹します。するとその一部の桜が秋から冬にかけて花を咲かせたのです。
これが現在親しまれている桜山の『冬桜』であり、今でも紅葉と桜のコラボレーションを楽しむ観光客が数多く訪れ、約7000本の冬桜が山一帯に咲き誇っています。
また三波石はその美しさから日本庭園などの庭石として重宝されており、1600年代初期の史料には既にかなりの高値で取引されていたという記述が残されています。
更に江戸時代中期になると三波石峡にはたくさんの観光客が訪れており、観光地としても発展していました。
しかし現代では、冬桜を見てきれいと思う人はたくさんいるものの、家に庭石を置くことに価値を見出す人は少ないのではないでしょうか?
実際、三波石に限らず庭石の需要は大きく低下しており、バブル前は数百万円で取引されていた庭石が現在はその100分の1以下の価格になっている例がほとんどだそうです。
しかしこの三波石。実は日本人の心の拠り所と言っても過言ではないある大切な場所に使われています。
それは・・・『伊勢神宮』。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)が祀られている日本最高位の神社である伊勢神宮には、20年に1度、『式年遷宮(しきねんせんぐう)』という行事が行われます。
これは神宮内の全ての社殿を20年に1度建て替え、大御神様に新しい社殿へ引越ししていただくと共に、身に付けている装束品や神宝なども全て作り変えるという超一大行事です。
西暦690年に天武天皇の指示で最初の式年遷宮が行われて以来、戦国時代に中断があったものの、これまでに62回、1300年以上に渡って行われているのです。
また当然、それに携わる宮大工さんや職人さんにとっては一世一代の大仕事であり、材料も厳選に厳選を重ねたものが採用されます。
そこに1993年の第61回式年遷宮の時、我らが三波石はご正宮へと登る直前の石段39段の材料として採用されたのです。
現地に行くと分かるのですが、確かに普通の神社やお寺で見るものとは全然違い、やや青みかがった石段はまさに『神へと登る階段』にふさわしい色を放っています。
おそらく、口頭で伝えても伝わらないと思いますので、是非一度伊勢神宮へ行ってみて下さい。三波石の美しさが実感できると思います。
2023年6月20日
M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』
KING OF JMK代表理事 渡邉 俊