香川県の寒霞渓(かんかけい)、大分県の耶馬渓と共に日本三大奇勝の1つとされている妙義山。
長い年月をかけて浸食された険しい山肌が特徴であり、1923年に国の名勝へ指定されました。その為、昨年2023年は名勝指定100周年という記念すべき年であり、11月にはその記念事業として大花火大会も開催されました。
そして、妙義山を語る際に忘れてはならないのが『妙義神社』の存在。
創建は今から約1500年前にあたる西暦537年であり、江戸時代には徳川の将軍たちがたびたび参拝に訪れていました。
また現在の社殿は江戸時代中期に改修されたものですが、建物全体が黒を基調として金泊が塗られ、また至る所に彫刻が施されています。
建築様式は『権現造り(ごんげんづくり)』という構造であり、国の重要文化財にも指定されているのです。
しかし本殿に行くには165段もある急勾配の石段を登って行かなければいけません。
その為、登り終えると本当にヘトヘトになるのですが、この本殿の裏手には何とも不気味なモノが祀られているのを、皆さんはご存じでしょうか?
それは鼻の高い赤い顔をした大きな『天狗』のお面。
実は妙義山には、あの奇妙な山の形を見れば想像のつく通り、昔から天狗が住んでいるという伝説があります。
ただ天狗というと大昔は魔物や妖怪と言われていましたが、江戸時代には山の神として人々から崇められていました。
妙義山には昔から山そのものを崇める山岳信仰があった為、当時の人々はその山に住む天狗も崇拝の対象とし始めたのではないかと考えられているのです。
更に妙義山には昔、山の中で修業をする『山伏』が多数存在していました。
彼らは日常生活からかけ離れた山岳地帯に住んで山の霊力を体に吸収し、その霊力で人助けなどを行う事を目的としていた人達です。その為、いつしか人々は天狗を山伏の死後の姿だと捉えるようになったと言われているのです。
ちなみに妙義山には3人の天狗がいると言われており、名前を『上野妙義坊(こうずけみょうぎぼう)』、『妙義山日光坊(みょうぎさんにっこうぼう)』、『金洞山長清法印(こんどうさんちょうせいほういん)』と言います。
このうち、この妙義神社の社殿の裏に祀られているのは『上野妙義坊』であり、3人の天狗の中で最長老であると共に、関東を代表する天狗のひとりです。
妙義神社の境内から眼下を見下ろすととても清々しい気持ちになりますが、同時に妙義の山中や森の中では今でも天狗が飛び交っていて自分が見張られているような。何とも不思議な気持ちになるのです。
2024年1月16日
M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』
KING OF JMK代表理事 渡邉 俊