群馬のほぼ中央を流れている一級河川『利根川』。
水源は群馬と新潟の県境にある標高1831mの大水上山(おおみなかみやま)の山頂付近であり、南に流れていった川は伊勢崎市付近から東に方向を変え、千葉県の銚子市で太平洋にそそいでいます。
その長さは322km。国内では信濃川に次いで2番目に長く、また大雨になるとたびたび氾濫して付近に住む住民を苦しめてきました。
とはいえ利根川は県民生活に欠かせない存在でもあり、古くから『坂東太郎』というニックネームで親しまれてきたのです。
さて話は変わりますが、以前もこのコーナーで申し上げた通り、上毛かるたは1947年に県民から札に採用する題材を公募する形で作られました。その際、この利根川は多くの方から題材として寄せられた訳ですが、利根川関連でもう1つ、札の案として挙がっていたある利根川の名物食材があります。
最終的には残念ながら採用されなかったのですが、それは何か皆さんはご存じでしょうか?
正解は『利根川鮎』。
ご存じの通り群馬に海はありませんが、その代わり利根川で採れる川魚を食べる文化が根付いており、地域によって異なるもののナマズやコイ、ドジョウなどを使った郷土料理が発展してきました。
そして、その中でもアユ漁は県内各地の利根川水系全域で盛んに行われてきたのです。
その為、群馬県は1989年にアユを県の魚として指定しています。
またアユの漁獲方法としては友釣りや鵜飼いなど様々ありますが、外せないのが『簗場(やなば)』を使った方法。
簗場とは川の中に足場を組み、木や竹ですのこ状の台を作った仕掛けを設置し、上流から泳いできた魚がかかるのを待つ漁法。この方法は鎌倉時代には既に日本各地で行われていたと言われています。
そして利根川でもアユの採れる夏が近づいてくると簗場で漁が始まり、またその近くに設置された食事処で、利根川の清流を眺めながら鮎料理を楽しむことができる訳です。
しかし残念ながら、県内の鮎の漁獲量は平成6年以降減少しています。
その不漁の原因は河川の環境悪化もありますが、川鵜(カワウ)による食害や、冷水病という魚の感染症なども要因として考えられているそうです。
そのため県では漁獲量を復活させる為、様々な取り組みを行っています。
とはいえ現在でも県内各地に簗場は存在しており、アユの塩焼きやフライ、甘露煮などの料理を味わうことができます。
夏ももうすぐ終わりを迎えますが、それと同時に鮎を楽しむ季節も終わってしまいます。今年の夏の締めとして、是非群馬の簗場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
2024年8月20日
M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』
KING OF JMK代表理事 渡邉 俊