2025年6月17日放送 - こ:心の燈台 内村鑑三


 

1861年に高崎藩士の長男として生まれた内村鑑三。

クラーク博士で有名な札幌農学校に入学し、そこで出会ったキリスト教の教えに深い感銘を受け、以後日本国内のキリスト教の布教活動に専念することになります。

また1908年には『代表的日本人』という本を英語で出版。日本人の精神や文化を世界に紹介した名著として今でも広く知られています。

 

 

さて、そのキリスト教に対する内村鑑三の功績を説明する際、絶対に紹介しなければいけないある言葉があります。

それは『無教会主義』。皆さんはこの言葉、ご存じでしょうか?

 

 

教会というとキリスト教の信者たちが集まり、共に祈りを捧げる場所。また礼拝したり、聖書を読んだりと信仰に関する様々な活動が行われます。

 

その為、キリスト教と教会というのは切っても切り離せない関係と思いますが、鑑三はその考えを否定し、『本当に大切なのは建物としての教会じゃなくて、自身の心の中で神を信じることだ』と説きました。

つまり教会に行かずに自分で聖書を読んで、神様を信じて生きていくことを信念とするのが無教会主義なのです。

 

  

このような考えを内村鑑三が持った理由は、彼の著書である『余は如何にして基督信徒(キリストしんと)となりし乎(か)』に書かれています。

 

1884年に初めてアメリカへと渡った内村ですが、当時のアメリカの教会は様々な教派が言いたいことを言って仲違いしており、各教会による信者の奪い合いが頻繁に起こっていました。

また大規模な教会には高価な装飾品が飾られていたり、礼拝の時にはお金持ちや地位の高い人が良い席に座って、貧しい人は後ろの方に追いやられていたりしている場面を見た鑑三は、次第に教会という存在そのものに違和感を持つようになったのです。

 

 

教会とは何か?どうあるべきなのか?をしきりに考えるようになったのですが、その結果、鑑三がたどり着いた結論は、『教会とは神が創造した世界そのものである』という考え方。

要するに教会になど行かなくても、自分が今いる場所で聖書を読んで、神様を信じて生きていくことこそが本当の信仰であるとした訳です。

 

 

そのため彼は生涯、どこの教会に所属することもなく聖書そのものを研究して、その内容を人々に説いていくことに没頭します。

そして1900年、鑑三は『聖書之研究』という雑誌を創刊。以後、この執筆はライフワークとなり、1930年にこの世を去る直前に執筆した第357号までずっと継続して発行しました。

これらの発行物は、現在も日本国内の多くのキリスト教信者の方々に愛読されているのです。

 

2025年6月17日

M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』

 

 

KING OF JMK代表理事 渡邉 俊