2023年10月31日放送 - ふ:分福茶釜の茂林寺


 

室町時代に開かれた館林の茂林寺。

 

昔、この茂林寺には守鶴(しゅかく)というお坊さんがいたのですが、ある日街から茶釜を購入して湯を沸かしたところ、どんなに汲んでも無くなりませんでした。

その為、たくさんの人に温かいお茶を振舞うことができたことから、この茶釜を”幸福を分ける”と書いて『分福茶釜』と名付けます。しかし、のちにこの茶釜は狸が化けていたことがわかるのですが、この話が明治時代におとぎ話となり現在に伝えられているのです。

 

 

さて、この茂林寺のすぐ北側に行ってみると、そこには大きな沼が広がっています。

通称『茂林寺沼』と呼ばれている場所なのですが、ここは列記とした日本遺産に登録されている大変貴重な場所です。皆さんはこの沼の存在をご存じでしょうか?

 

 

 

そもそも茂林寺がある館林周辺は利根川や渡良瀬川といった大きな川に挟まれている土地であり、昔から沼地や湿地帯が広がっていました。
その為、館林市内には茂林寺沼以外にも多々良沼や城沼など5つの大きな沼が残っています。
かつてはこの沼地の水を求めて徐々に人間が住み着くようになり、そこから村が生まれ、沼と人が共生しながら特有の文化が築かれてきたのです。

 

 

そして今でもこれらの沼は大きな開発をされることなく、昔とほぼ同じ状態で残っています。
普通の住宅街の中に、時が止まっているかのように大自然が広がっているのですが、このような手つかずの状態で残されているのは茂林寺の存在が深く関係しています。
今から600年前に信仰の拠点である茂林寺が沼の隣に建てられたことにより、当時の住民達はこの沼の自然も信仰の対象として敬うようになったからです。

 

また茂林寺は茅葺き屋根であり、定期的にその葺き替えを行わなければならないのですが、その際には茂林寺沼にある茅が代々使われてきました。
生い茂った沼の茅を刈り取ることによって沼の生態系も維持することができる為、この葺き替え作業は一石二鳥。
そうやって守られてきた茂林寺沼には今でもコイやフナ、ドジョウ、ナマズなどが多数生息しており、夏になるとウシガエルの鳴き声が響きわたります。更にはオニバスなど絶滅危惧種に指定されている植物も多く自生しているのです。

 

 

またその為、遠方からこの茂林寺を訪れる参拝客には昔からナマズやドジョウなどの川魚料理が振舞われてきました。今でも館林や板倉町付近には川魚料理の店が軒を連ねています。

このように館林の沼は人々との生活に大きく関わっています。昔から住民の生活と密接にかかわっている山のことを『里山』と呼びますが、館林付近ではこれらの沼のことを『里沼』と呼んでいるそうです。

 

202310月31日

M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』

 

KING OF JMK代表理事 渡邉 俊