2024年1月30日放送 - ゆ:ゆかりは古し貫前神社


 

富岡市にある『一之宮貫前神社』。

一之宮とは当時の上野の国の中で最も格式の高い神社であったことを示しています。

 

 

また『ゆかりは古し』と札に詠まれているように、この貫前神社が創建されたのは今から約1500年も前の西暦531年。その長い間、上野の国を見守ってきた由緒正しき神社なのです。

 

 

さて、その貫前神社へお参りに行くと、金色のカエルのお守りが売られているのを皆さんは見た事あるでしょうか?

このカエルの名前は『無事カエル』。敷地内で売られている為、このカエルが貫前神社に祀られている神様だと勘違いしている方も多いようなのですが、実はそうではありません。

 

 

時は1943年。当時日本は第二次世界大戦を戦っていた訳ですが、ご存じの通り、戦況は思わしくありませんでした。

そして当時若い男性の人生を大きく左右したのが『召集令状』、通称:『赤紙』。

 

役場の職員から「おめでとうございます。」という言葉と共に直接届けられ、それを受け取った本人や家族は言葉を失い、高まる感情に堪えながらも「確かにお受けしました。」と頭を下げるしかなかったと言います。

 

また赤紙には具体的な召集場所と期限が記載されている為、本人と家族は悲しむ間もなく親類などの家へあいさつに行かねばなりません。そして貫前神社で無事を祈り戦地へと旅立つ訳ですが、ちょうどその頃、神社にある木にカエルの形をした茸が生えていました。

その為、この茸はいつしか『勝ってカエルことができる縁起物』だと言われるようになり、当時の人達から丁重に扱われたのです。

 

 

そしてその後、終戦を迎えた事で戦地での無事を祈りに来る参拝客はいなくなりましたが、その約20年後、このカエルの茸は再び注目を浴びることになります。

1960年代、日本は高度経済期に入っていて自動車の交通量が爆発的に増えていった訳ですが、その影響で社会問題となったのが交通事故。

1970年には国内の事故による死者数が1万6765人という記録的な数字となってしまったのです。2022年の交通事故の死者数が2610人ですから、当時如何に交通事故が頻繁に起きていたのかが良く分かります。

 

 

そのため、当時の富岡市観光協会が神社に働きかけたことにより、このカエルの茸にあやかって『無事カエル』という交通安全御守にしたのです。

現在でもこの御守は神社内で販売されており、新車を購入した際には販売ディーラーが交通安全祈願としてクルマと一緒に渡したりしています。

 

 

皆さんが毎日家族のもとへ無事に帰ることができるのは、実はとても大切なことなのです。

今まさに仕事を終えて家路を急ぐそこのアナタ。くれぐれも事故など起こさぬよう、ご家族の元に帰ってあげて下さい。

 

2024年1月30日

M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』

 

KING OF JMK代表理事 渡邉 俊