2023年1月24日放送 - り:理想の電化に電源群馬


上毛かるたが制作された1947年は、戦後最大の台風と言われた『カスリーン台風』が襲来した年。
これによる水害や赤城山などの山地崩壊により県内では死者592名、行方不明者107名の大惨事となりました。

 

更に人々を悩ませていたのが戦争の影響による深刻な電力不足。

当時は日本全体が復興に向けて進んでいましたが、石炭が不足していた為、停電は日常茶飯事だったのです。

 

 

その為、当時は県内に多くのダムを建設することで洪水対策や水力発電による電力供給が急務となっていました。

今となっては『理想の電化』と言われてもピンと来ないと思いますが、かるた制作当時の人々にとってみれば、安定して電気が使えるというのは憧れの生活であった訳です。

 

 

そして現在、資源エネルギー庁が発行する2019年度の電力調査統計によると、群馬県の水力発電所の数は全部で『74』。

都道府県別でみると全国第7位、関東地方のみで見ると断トツのトップを誇っています。

 

 

そんなダム王国である群馬ですが、この群馬県内に初めて作られた水力発電所はどこか、皆さんはご存じでしょうか?

 

ダムと言うと山の中にある・・・と思いがちですが、実はそうではありません。

正解は『前橋市総社町』。

 

 

群馬総社駅の近くに天狗岩用水という水路があるのですが、ここにレンガ積みの遺構と一緒に『群馬県水力発電所発祥の地』という説明板が立っています。

ここに明治時代、植野発電所という施設が建設されたのです。

 

 

そもそも天狗岩用水ができたのは1604年。

これより以前、この地域の農業は雨水のみに依存していたのですが、より収穫量を多くする為、利根川から水を供給する為の人工水路を作ったのです。

当時としては大事業であったのですが、この用水路によって総社町周辺の収穫高は6千石から1万石に増加したと言われています。

 

 

そして1894年、この天狗岩用水を利用して水力発電を行う為に作られたのが植野発電所。

この年、県内で初めて前橋の中心街に電灯が設置され、配電線による電力供給が行われました。当時、初めての電灯に多くの前橋市民が見物に訪れたそうです。

 

しかしその発電能力はというと、わずかに50kW。現代の100Wの電球であれば500個しか点灯させることができない小規模なものであり,その後電力需要が急激に高まっていったことにより、1914年で廃止となってしまいます。

 

現在は天狗岩用水の橋の下に小さなレンガ積みの遺構が残っているだけであり、おそらくほとんどの方が気づいていないと思います。

しかし、理想の電化を目指した群馬の水力発電は、ここ総社町で産声を上げたのです。

 

2024年2月20日

M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』

  

KING OF JMK代表理事 渡邉 俊