2025年4月1日放送 - あ:浅間のいたずら鬼の押出し


 

 1783年。

 

この年、4月から小規模な噴火を繰り返していた浅間山は、8月5日に大爆発を起こします。

別名:天明の大噴火とよばれるこの爆発は、群馬県内だけで約1500名もの死者を出した日本史上最大級の火山被害であり、またこの時に火口から流れ出た膨大な溶岩が冷え固まってできたのが、『あ』の札に読まれている嬬恋村の鬼押出し園。

 

戦前、既にリゾート地として知られていた軽井沢に近かったことから、観光地としての開発が進み、現在は年間約30万人が訪れる人気の観光スポットとなっています。

 

 

さてこの浅間山ですが、噴火を起こしたのはこの時だけではなく、約10万年以上も前から何度も繰り返し発生しています。

その為、浅間山周辺の土壌には火山灰を含む黒ボク土(くろぼくど)という黒い土が広く分布しています。

 

実はこの黒ボク土は世界でも1%程度しか分布していない貴重な土です。しかし、昔の人達はこの土を『のぼう土』と呼んでいました。のぼうとは”役立たず”の意味であり、要するに農業には不向きで昔はススキやササなど限られた植物しか育たなかったのです。

 

 

しかし戦後、化学肥料などが開発されると黒ボク土の評価は一転。

もともと排水性には優れていたので、この土地一帯を農地として開拓する事業が進められます。

そしてじゃがいもやレタスなど様々な野菜の試験栽培が行われたのですが、この黒ボク土での栽培に最も適していると判断されたある野菜があります。それは何か、皆さんはご存じでしょうか?

 

 

正解は・・・キャベツ。

 

 

 

 

ご存じの通り、浅間山の北側にある嬬恋村は日本有数の夏秋キャベツの産地。

標高700〜1400メートルの高冷地に位置する嬬恋村は夏でも気温が低く、昼夜の寒暖差が大きい為、キャベツが育ちやすい環境ではありました。

そんな中、この一帯の黒ボク土の性質も身の締まったキャベツの栽培に適していることが分かり、日本全体が食糧難で困っていた最中の救世主として、1950年代から本格的な農地開拓政策がスタートしたのです。

 

 

その後、昭和40年代には流通網なども整い、キャベツの生産量は飛躍的に拡大。現在では嬬恋村は日本一の夏秋キャベツの生産地となり、1970年から現在に至るまで50年以上連続で夏秋キャベツの生産量日本一を誇っています。また一面に広がるキャベツ畑は嬬恋村の景観の象徴となっている訳です。

 

 

ただ上毛かるたが制作された1947年当時、嬬恋ではまだキャベツの生産は行われておらず、残念ながら上毛かるたには登場していません。

しかしこの嬬恋キャベツは、日本有数の活火山である浅間山が人々にもたらした自然の恵みでもある訳です。

 

 

2025年4月1日

M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』

 

 

KING OF JMK代表理事 渡邉 俊