群馬の県庁所在地である前橋市。
現在群馬県庁のある場所はかつて前橋城の本丸があった所であり、戦国時代から前橋は城下町として栄えていました。
また幕末から昭和にかけては生糸の集散地として栄え、前橋からヨーロッパに輸出された生糸は『マエバシシルク』と呼ばれ人気を博しました。
その為、上毛かるたでは前橋を『生糸の市(いとのまち)』と表現しているのです。
そして今でも、かつて前橋が生糸で栄えていた街の面影を残している建物があります。
その1つが住吉町の国道17号を折れて県民会館へ行く通りの途中にある『旧安田銀行担保倉庫』。
レトロな雰囲気をかもし出しているレンガ造りの建物なのでご存じの方も多いと思いますが、皆さんはこの倉庫が何に使われていたかをご存じでしょうか?
この建物は1913年に”群馬商業銀行細ヶ沢出張所付属倉庫”として建設され、その後明治商業銀行を経て、現在のみずほ銀行の前身である安田銀行の施設となります。
そしてこの倉庫は主に、銀行からお金を借りる際、その担保と差し出された繭や生糸の保管の為に利用されていたのです。
繭や生糸を担保にしてお金を借りるなんて現代ではちょっと考えられないですが、明治・大正の時代は、製糸業者などが生産した繭を担保にして金融機関から融資を受け、それを資金として生糸を生産する機材を購入したり、販売する為の店舗を作ったりということが当然のように行われていました。
そのため当時は、繭や生糸を保管する倉庫が前橋市内はもちろん、全国的にも養蚕業が盛んであった地域の至る所に存在したと言われています。
そうすることで製糸業者は事業を更に拡大させることができ、日本の生糸産業はどんどん飛躍していった訳です。
しかしその後は老朽化で次々と取り壊されたり、戦争の影響で無くなったりして現在では数えるほどしか残っていません。
]またこの旧安田銀行の倉庫も、以前は南側にもう一棟、同様の倉庫が存在していたのですが、1945年の前橋空襲によって残念ながら焼け落ちてしまいました。
ただ現存している旧安田銀行の担保倉庫は、戦後に前橋乾繭(かんけん)取引所の倉庫として利用された為、建設当時の姿そのままで残っている訳です。
そして2004年、日本政府はこの倉庫を”近代の地域経済を物語る巨大な煉瓦倉庫”として、国の登録有形文化財に指定されました。
そして今でも一般倉庫の役割を担っているだけでなく、美術展などのイベント会場としても幅広く利用されています。
2025年5月27日
M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』
KING OF JMK代表理事 渡邉 俊