2025年7月15日放送 - せ:仙境尾瀬沼花の原


群馬・福島・栃木・新潟の4県にまたがる『尾瀬国立公園』。

毎年数多くの観光客が訪れる国内屈指の景勝地ですが、日本の国立公園の中でも一番規制の厳しい『特別保護地区』に指定されており、湿原には全長約65kmの木道が整備されています。

 

更に尾瀬には自動車用道路が通っておらず、そのため群馬~福島間の県境は地続きで接ししているのにも関わらず、自動車の往来する道路がない国内唯一の県境としても知られています。全ては尾瀬の環境保護の為なのです。

 

 

そしてその尾瀬の景色の象徴とも言えるのが尾瀬沼や尾瀬ヶ原ですが、忘れてはならないのが『せ』の札の後ろの方に描かれている標高2,228mの至仏山(しぶつさん)。

尾瀬ヶ原の西端に位置するこの至仏山は日本百名山の1つにも数えられており、山頂からは尾瀬ヶ原の絶景を一望できる人気の登山スポットです。

 

 

更にこの山にはオゼソウやカトウハコベ、シブツアサツキなど、日本国内では大変珍しい植物が数多く生息しており、植物ファンや研究家も注目している地域となっています。

しかしなぜこの山には珍しい植物ばかり生えているのか、皆さんはご存知でしょうか?

 

 

 

 

 

それは至仏山を形成している『蛇紋岩(じゃもんがん)』という地質にあります。

 

蛇紋岩は岩肌に蛇のような模様があることからそう命名されたのですが、今から約2億3000万年前に形成された非常に古い岩石です。尾瀬一帯では至仏山付近にしか分布していません。

また科学的な特徴としてはケイ素とマグネシウムを多く含んでいるのですが、植物学上で重要な意味を持っているのはこのマグネシウムであり、これがイオンとなって蛇紋岩から溶け出すと植物の根からの吸水を鈍らせてしまいます。

そのため至仏山では我々が身近に見ることのできる植物の生息は難しく、蛇紋岩に適応できる植物のみが残されたという訳です。

 

 

そしてこの至仏山ですが、例年同様、今月7月1日に山開きをしました。

私自身がまだ登ったことがないので偉そうなことは言えないのですが、是非興味のある方は至仏山登山にチャレンジしてみて下さい。

ただ先程も申し上げた通り、尾瀬国立公園一帯は特別保護地区に指定されており、動植物の採集は原則禁止。また落ち葉や枯れ枝、小さな虫でさえも持ち帰ることは一切できません。

これらの植物は現地で観察するだけにして、持ち帰るのは思い出だけにしておきましょう。

 

 

更に至仏山一帯の蛇紋岩はとても滑りやすい地質だと言われています。

登山の際には靴などの装備はもちろんのこと、体調を整えた上でお出かけください。

 

2025年7月15日

M-wave Evening Express 84.5MHz『上毛かるたはカタル』

 

 

KING OF JMK代表理事 渡邉 俊